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「自社ビルを建てると会社が傾く」というのは都市伝説!?

儲かってくると・・・

儲かってくると、段々と家賃を払っているのが馬鹿らしく感じてきて、「そろそろ我が社も自社ビル取得の時期かなぁ」などと妄想が膨らみ始めます。中小企業にとって、自社ビルというのは一流企業の証という偏った認識があります。また、多分に見栄も影響して、未だ自己資金が不足している状況で、自社ビルを検討される会社が多いのも事実です。  

よく、「自社ビルを建てると会社が傾く」といわれます。事実、歴史を振り返ると、自社ビルをきっかけに倒産の憂き目に遭った会社は数多く存在します。では、自社ビルを建てるとなぜ会社が傾くのでしょうか?

土地は税引後の利益からしか買えない

例えば、100の儲けがあって、広告宣伝費に100使ったとします。すると、損益計算書上の会社の利益は、100-100=0となり、原則会社で法人税などの税金は発生しません。

しかし、これが自社ビルを取得(建物40、土地60)したとなると違います。この場合の損益計算書上の会社の利益は、100-40×1年/40年=99となります。そして、99×40%(実効税率と仮定)=約39が税金となります。ここで、建物40については、簡易的に40年の耐用年数としてその1年分を減価償却費計上しています(ちなみに、中古建物の場合は耐用年数が短くなる可能性があり、電気設備などの建物付属設備部分については、更に短い耐用年数を利用できる可能性があります)。また、土地60については、全く経費になりませんのでその分利益が出てくることになります。  

結果、建物部分については、早い遅いは別としていずれ減価償却を通じて費用計上できます。そして、会社支払額≒会社経費計上額となりますのでまだいいのですが、土地は違います。土地は買っても、通常全く経費になりません。つまり、会社支払額≠会社経費計上額(0円)です。結果、土地は税引後の利益からしか買うことができないということになりますから、資金繰りが大変です。  

一方、自己資金で自社ビルを取得するというのであれば、そう問題はありませんが、通常そのようなケースは少ないです。出来れば自己資金2割を目安にしてほしいのですが、中にはフルローンというケースもあります。借金の返済は経費ではありません(支払金利のみ経費)から、これが先ほどの土地取得が経費にならないことと相まって、後々ボディブローのように会社の資金繰りに影響してきます。

得意先、仕入先、従業員の目

「自社ビルを建てると会社が傾く」というのは、先ほどの財務的アプローチ以外の要因もあるようです。  

例えば、自社ビル完成披露パーティーなどを催したとします。こちらとしては、無料の招待で飲み食いや記念品まで付けてさぞかし得意先などは喜んでくれているだろうと思っていると、「えらい儲けはってんなぁ、次回からは金額をもっと厳しくせなあかんなぁ」などと心の中では全く違う反応をしていることもあります。これは、仕入先なども同様で、「こっちはいつもこんなにたたかれているのに、勝手な会社やなぁ」などと感じているかもしれません。もちろん口には出しませんが。  

更に、より身近な従業員はもっとシビアな可能性があります。自社ビルで舞い上がっているのは経営陣だけで、従業員は、「引越しが面倒だなぁ」とか「これだけ儲かっているなら俺の給料ちょっとでいいから上げてよ」などと、飲み屋で愚痴を言っているかもしれません。  

そして何よりいけないのが、経営陣自身の意識が変化してしまうことです。自社ビル取得などとなると、「偉そうになったり」、「他社への配慮が欠けたり」するような方もおられます。財務的要因以外にも、会社が傾きかねない要因があちらこちらに発生しています。

自社ビルは悪いこと?

とはいえ、もちろん、自社ビル取得は悪いことではありません。私たちもよくアドバイスとして、いずれ自社ビル取得を目指しましょう、とお話します。中小企業における目標設定として、将来の自社ビル取得は一般的には良い事です。  

しかし、先ほどみた「土地の購入や借金返済が経費にならないという財務的要因」と「他人から見た自社ビル取得の負の要因」などから、自社ビル取得は会社が傾く可能性が高いと認識しておくことは大切です。自社ビル取得というのは、有形・無形の悪い波を引き付けてしまうことがありますので、より一層気を引き締めて仕事に取り組む姿勢が重要です。

2009.11.1執筆

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

今村 仁

今村 仁

「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。

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