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不良債権を回収するための3つの手順

決算2ケ月前にやること

決算2ケ月前にはぜひ手をつけていただきたい決算対策として、「会社資産の見直し」があります。

会社資産の見直しとは、貸借対照表の左側に掲載されている資産科目について、それぞれ売却や処分、整理などを検討するということです。もちろんこれは、今期業績の黒字化対策や節税対策、格付対策に貢献させるためです。  

多くの中小企業の経営陣というのは、普段は売上や利益がわかる損益計算書を中心に見ているのではないかと思います。しかし、今まで見てきたように、「資産科目」の見直しが決算対策においては最も効果が高いといえますので、この項目はとても重要です。

まずは、不良債権化している売掛金や未収入金

会社資産の見直しでは、まずは売掛金や未収入金で不良債権化しているものがないかチェックしてください。債権管理は毎月やるべき重要な仕事ですが、普段はルーチン業務になってしまっていて、それに対する的確なアクションなどがきちんと起こせていないことも多いでしょう。  

しかし、中小企業における不良債権というのは、会社を倒産させてしまうことがあるぐらいですから、経営重要課題といえます。実際、売上に対する仕入代金や税金の支払いは行っていますから、それに見合う入金がないというのは、とても会社経営を逼迫させます。逆にいうと、不良債権がいくらかでも解消できると、非常に効果の高い決算対策(資金繰り改善)となります。

不良債権を回収するための3つの手順

そこで、中小企業における不良債権を回収するための手順をまとめました。下記をご覧ください。

(債権回収3つの手順)
手順1 話し合いを至急行う
→出来るだけ早く対応する、相手先の会社に出向く
→入金遅れの理由確認、誤解が生じていることもある、他社より優先度を上げてもらう
→費用対効果を常に頭に入れておく、時には妥協が必要なことも

手順2 内容証明郵便や公正証書を活用する
→内容証明は、法的強制力はないが心理的緊張感が生じる
→公正証書は、高い証明力と容易な強制執行などの特長がある

手順3 法的手続きを検討する
→「少額訴訟」「民事調停」「支払督促」は有効な場合もある  

入金が遅れる滞留債権となったときに、一般的に中小企業でやってはいけないのは、いきなり「内容証明郵便」を事務的に送りつけるようなことです。中小企業の滞留債権でよくあるのは、「意思疎通が不完全で支払いが滞っているケース」や「相手先がちょっと待って欲しいと考えているケース」です。誤解などが生じていて入金遅れになっているだけということもあるのに、いきなり内容証明郵便を送りつけたりすると、相手の反感を買い思わぬ対立関係をうむことがあります。もらえるはずのお金がもらえなくなってしまった、という事態に陥らないようにしましょう。

話し合いを至急行う

そこで、入金遅れがあったときには、まず「話し合いを行って」ください。膝を突き合わせて話を行い、誤解が生じていれば解消し、相手のやむにやまれぬ事情があるのなら傾聴して、まず血の通った対応を行いましょう。これは、もちろん相手のためというより自社のためです。  

話し合いが大事とはいえ、入金遅れが発覚したときは出来るだけ早く対応してください。20日入金予定であれば、翌21日の午前中には先方に連絡を入れるぐらいのスピード感が大切です。更には、相手先の会社に出向くことが出来ればベターでしょう。  

話し合いでまず確認するべきことは、入金遅れの理由です。こちらの請求書の送付遅延や商品・サービスに不満を感じていることなどが、その理由かもしれません。このようなケースでは、こちらも譲歩すべき部分は譲歩して解決策を模索してください。

また、別のケースとして、資金繰りの関係で支払いが遅れている場合には、相手の会社の当社への支払い優先度を上げてもらう手立てが必要です。支払い先すべてに対して遅延が生じているわけではないでしょうから、例えば、こちらの行った仕事の中身を十二分に話して、情にも訴えて、他社よりも当社を優先するべきであることを相手の会社に認識してもらってください。

余談ですが、うるさい相手や素早い対応をしてくるようなところには、通常「この会社は先に支払っておこう」という心理が働くものです。債権者平等などという言葉に惑わされないようにしましょう。  

また、話し合いの過程では、債権回収の費用対効果も大切です。ケースによっては、分割払いの提案やいくらの値引きが必要となることもあります。感情的にならず、ここは理性的に費用対効果で損得を判断するべきです。

話し合いで妥協点が見出せないときには、わずかでもいいので入金してもらってください。相手が債務を支払った場合には、債権が消滅してしまう時効を中断させることができます。一般的な売買代金債権の時効は2年です。

内容証明郵便や公正証書を活用する

話し合いをしても解決せず、こちらに非が無い場合、次の手順としては、取引内容を記した文章を「内容証明郵便」を使って発送することが必要となります。  

内容証明郵便とは、「誰が、誰宛てに、いつ、どんな内容の手紙を出したのか」ということを郵便局が公的に証明してくれるものです。しかし、実はこの内容証明郵便を使っても法的強制力はほとんどありません。にもかかわらず実行するのは、受け取った側に心理的緊張感を生じさせて、結果として回収を早めようという手はずです。ただし、債務支払いと同様、債権消滅時効中断の効力はあります。

内容証明郵便を送っても入金が遅れがちという場合には、「公正証書」の活用を検討してください。

公正証書とは、私文書とは違い公証役場で公証人により作成されます。そのため、文書の信憑性を問われることはなく、高い証明力と容易な強制執行などの特長があります。例えば、分割返済計画等の内容を、多少の手間と費用がかかりますが公正証書で作成するのです。こういった形式ばったことをすると、相手も、今後の支払いには厳粛な対応をしてくることが期待できます。

法的手続きを検討する

債権回収の最後の砦が、「法的手続き」です。法的手続きといっても色々あります。通常の訴訟であると、費用や時間が多くかかりますのでおすすめしません。

しかし、「少額訴訟」という原則1回の審理で判決が言い渡される便利な制度もあります。ただし、60万円以下の債権が対象となっています。

他にも、話し合いで解決の余地が残っている場合は、「民事調停」という手続きも有効です。更には、債権者からの申し立てで簡易裁判所が支払い命令を出してくれる「支払督促」という制度もあります。相手の会社に争う意志があれば、通常の訴訟に移行されますが、明らかにこちらが有利な場合は有効なことがあります。  

ちなみに、法的手続きではないのですが、特殊な債権回収手段としては、「相手先の商品やサービスを購入する」、「債権を滞留先に債務を有する会社に譲渡する」というものもありますので、覚えておいてください。

やむを得ず回収できないときは節税対策に活用

不良債権を回収するためにあの手この手をやってみたけど、なかなか回収が難しいというケースもあるでしょう。  

そのようなケースでは、その不良債権を節税対策に活かせないか検討してみてください。不良債権が貸し倒れとして税務上認められれば、貸倒損失という費用が認められ、おおむねその不良債権の40%について節税効果が期待できます。  詳しくは、節税対策のページをご覧ください。

2009.11.1執筆

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

今村 仁

今村 仁

「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。

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