3か月でできる決算対策

この章では節税対策を中心に解説を加えてきましたが、その節税対策が本当の意味で完結するのは、その後にやってくるであろう税務調査が終わってからではないでしょうか。 　

そこで、意外と知られていない「税務調査の対象となりやすい会社」について、まとめてみます。こういったときに税務調査の選定対象会社になりやすいということを知っていると、事前に釈明資料の作成や保存の徹底を図れることでしょう。節税対策を実施しつつ、税務調査対策も実施できれば、鬼に金棒です。

図　税務調査の対象となりやすい会社

１．売上高が大きい会社
２．黒字会社
３．急成長した会社
４．長期間税務調査が実施されていない会社
５．現金売上がある会社
６．決算書で異常値がある会社
７．決算書の経営分析項目（売上総利益率など）で異常値がある会社
８．同業種と比較して申告所得が低い会社
９．代表者や関連会社との取引がある会社
１０．経営者個人で大きなお金の動きがあった会社
１１．多額の投資を行った会社
１２．取引先や従業員とトラブルがあった会社
１３．マスコミ等で話題になった会社

図にあるように、「売上高が大きい会社」や「黒字会社」は税務調査が入りやすいといえます。やはり税務署も、調査をするからには出来るだけ多くの追加税額をとれるように費用対効果を考えているのでしょう。 　

また、「急成長した会社」というのも、税務調査の可能性が高いです。というのも、急成長会社は、得てして経理や管理が不十分となっていて、税務申告が不適切なことが多いからです。 　

「長期間税務調査が実施されていない会社」というのも調査が入りやすいのですが、他には、「現金売上がある会社」も脱税の可能性を疑われて税務調査が実施されることもあります。

節税対策と密接にからむのが、次の「決算書で異常値がある会社」や「決算書の経営分析項目（売上総利益率など）で異常値がある会社」、「同業種と比較して申告所得が低い会社」です。要は、前期比較や同業種比較において、売上高や特別損益項目、更には売上総利益率などで異常値がある会社のことです。

通常、決算対策を実施すると、これらの異常値が認識されることがあります。異常値がダメということではありません。税務調査で必ず聞かれると考えて、その釈明資料などを準備してきちんと説明できればいいのです。例えば、「地代家賃の短期前払費用を活用したのであれば、新しい賃貸借契約書」、「役員退職金を支給したのであれば、議事録や支給明細書」などをきちんと作成・保存しておくといいでしょう。

他にも、「代表者や関連会社との取引がある会社」や「経営者個人で大きなお金の動きがあった会社」も税務署に狙われやすいです。また、節税対策を兼ねて「中古資産の購入」や「本社などの修繕」、「保険加入」などの「多額の投資を行った会社」というのも、税務調査の可能性があります。しかし、この場合も、請求書や領収書の保存などを徹底しておけば問題ないでしょう。 　

意外なところでは、「取引先や従業員とトラブルがあった会社」も調査に入られやすいです。税務調査においても、内部告発や第三者通報という密告制度があります。トラブルがある会社というのは、得てして税務申告においても問題があることが多いということを、税務署は経験則で知っているのでしょう。 　

最後は、「マスコミ等で話題になった会社」です。有名芸能人が通う店などとマスコミで話題になると、実はその掲載された記事などを、税務署も見ているのです。そして税務申告書と比べて、なぜこんなに利益が低いのだろうとなれば、税務調査の可能性が高まります。 　

ちなみに、税務署が管轄する法人は全国で270万社以上ありますが、そのうち調査選定会社となるのは約6％程度の16万社となっています。