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在庫担当者に適正在庫を把握してもらって、格付・資金繰り対策
在庫が増えるとどうなるの?
税理士事務所の仕事をしている中で、時々受ける質問が、「在庫が増えると決算にどのように影響するのですか」というものです。
実は、在庫というのは会社の決算に大きく影響します。具体的には、下図にあるように貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書(間接法)のいわゆる財務3表すべてに影響します。
在庫が増えて一番影響が大きいのは、キャッシュフロー計算書です。仕入れた在庫が販売できれば、資金回収となり、通常は利益も計上されるでしょうから問題ありません。それが、未販売で会社の倉庫に眠ったままの在庫であると、キャッシュフロー計算書(間接法)の「営業活動によるキャッシュフロー」においてマイナス評価となります。つまり、在庫が増えると「資金繰りが悪くなる」ということです。
また、在庫は資産ですので、貸借対照表の流動資産の部に計上されます。在庫が増えると、この流動資産の部が膨らむことになります。このこと自体では良し悪しは判断できませんが、過剰在庫は一般的に、「流行遅れや陳腐化などの不良在庫」が発生しがちですので、適正在庫の維持に努めるのが賢明です。
もう1つ在庫が影響するのは、損益計算書です。在庫は損益計算書の売上原価項目に期末棚卸高として計上されます。在庫の金額が多ければ、売上原価は小さくなり利益は多くなります。逆に少なければ、売上原価は大きくなり利益は少なくなります。
時々間違った節税対策で、決算間際に多くの仕入を行う会社がありますが、上記のとおり、その分在庫も多くなりますので節税対策とはなりません(消費税は除きます)。
5つの在庫削減対策
過剰な在庫は会社の資金繰りなどに悪影響を及ぼしますので、避けなければなりません。
そこで、過剰在庫とならないように、適切な在庫削減を実施して適正在庫を維持するための対策を以下に5つまとめてみました。参考にしてください。
【5つの在庫削減対策】
・倉庫の整理整頓を行う
・販売計画の精度を上げる
・販売品目を減らす(見直す)
・物流拠点を見直す
・在庫を抱えないビジネスモデルを考える
在庫管理でまず大事なのが、「倉庫の整理整頓」です。どの棚に何があるのかが誰の目からみても明らかな状態にしておかないと、得てして過剰在庫となりがちです。
次には、販売計画に合わせて仕入れる業種の会社であれば、「販売計画の精度を上げる」ことができれば、過剰在庫や逆に欠品在庫となりにくいでしょう。
また、「販売品目を減らす」や「物流拠点を見直す」ことも在庫削減に貢献します。
最後に視点を変えて、「在庫を抱えないビジネスモデルを考える」というのも、抜本的な在庫削減対策となります。
在庫削減で、格付・資金繰り対策
在庫は会社の必要運転資金の一部を構成します。また、在庫を抱えることは、会社の資金を倉庫に寝かせていることでもあります。在庫資金を自己資金でまかなえないときは、金融機関からの借入が発生し、金利を支払うことにもなります。
しかし、上記5つの方法を使って、過剰在庫を適正在庫に変更出来ると、余剰資金が出来るので、会社の資金繰りが良くなります。
また、その余剰資金で借入返済を実施できると、「有利子負債の削減」及び、「総資産圧縮により自己資本比率などの向上」となり、金融機関の格付評価がアップする可能性があります。
2009.11.1執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
今村 仁
「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。